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ハイサイドライトで叶える、ワンランク上の暮らしとデザイン
2026.01.31
「リビングは絶対に20畳以上欲しい!」 注文住宅を建てる際、多くの方が描く理想です。
しかし、ローコスト住宅では面積(坪数)を増やすほど建築費用が跳ね上がります。
「予算的に16畳が限界…」と不安になる方も多いですが、実はリビングの満足度は「畳数」では決まりません。
本当に大切なのは、「通路(動線)」をどうデザインするか。
面積を増やさずに開放感を最大化する、プロの設計術を解説します。
注文住宅の間取り図を眺めていると、玄関からリビングへ、リビングから洗面所へと続く「廊下」が当たり前のように描かれています。
しかし、一度立ち止まって考えてみてください。廊下はあくまで「移動するためだけの場所」であり、そこでソファを置いてくつろいだり、家族で団らんしたりすることはありません。
ローコスト住宅において、この廊下は実は非常にもったいないスペースです。
一般的に1坪(約2畳分)の面積を増やすには、数十万円単位の建築コストがかかります。
家全体にある廊下を合計してみると、それだけで100万円単位の予算が「通り過ぎるだけの空間」に消えていることも珍しくありません。
そこでおすすめしたいのが、「廊下をなくし、その通路分をリビングに取り込む」という発想です。
これまで壁で仕切られていた廊下をリビングの一部、つまり「通路兼リビング」として設計するのです。
これだけで、建築費用を抑えつつ、リビングの実質的な有効面積を劇的に広げることが可能になります。

「仕切りをなくしてリビングを通り道にしたら、家族がバタバタ横切って落ち着かないのでは?」という心配の声も聞こえてきそうですが、そこはプロの設計の工夫で解決できます。
ただ壁を取り払うのではなく、いくつかのルールを守ることが大切です。
まず重要なのは、くつろぎの場を「分断させない」ことです。例えば、テレビとソファの間を家族が頻繁に横切るような動線では、ゆっくり映画を楽しむこともできません。
通路となる動線をリビングの「端」に寄せることで、ソファでくつろぐ人の邪魔をせず、プライベートな心地よさを守りながら家族の気配を感じられる空間になります。
次に、家具の配置から逆算して「必要な壁」を残すことです。廊下をなくすと開放感は出ますが、一方で壁が減ってしまいます。
リビングにはテレビや棚を置いたり、お気に入りの絵を飾ったりするための壁が必要です。設計段階で家具の位置を具体的にシミュレーションし、通路を確保した上で、コンセントの使い勝手まで含めた壁の配置を検討しましょう。
また、視覚的な「抜け」を作ることも重要です。お部屋の広さは床の面積よりも「視線がどこまで届くか」で決まります。
例えば、ドアを天井まで高さがある「ハイドア」に替えるだけで、ドアの上の小さな垂れ壁がなくなり、天井が奥までつながって見えるため、開放感が劇的にアップします。
「あと2畳広くしたい」と悩んで100万円の追加予算をかけるよりも、その分を削って「毎日が楽しくなるこだわり」に投資してみるのはいかがでしょうか。
例えば、視線の先に大きな窓や、空が見える高窓(ハイサイドライト)を配置すれば、視線が外へ抜けて実際の畳数以上の広がりが生まれます。
また、壁の一部を少し凹ませて作る「ニッチ」を取り入れれば、リモコン類やスイッチをスッキリまとめられ、床に余計な家具を置かずに済むため、掃除も驚くほど楽になります。
面積という「数字」に縛られず、一つの空間に「移動・くつろぎ・遊び」といった複数の役割を持たせる。この柔軟な設計こそが、限られた予算で後悔しない家づくりの鍵となります。
「20畳あるけれど廊下が長くて使いにくい家」よりも、「16畳だけれど動線が整理され、お気に入りの家具が映える家」の方が、住んでからの満足度は圧倒的に高くなるはずです。
ローコスト住宅の設計で一番大切なのは、畳数という数字に縛られないことです。
通路をリビングに取り込み、動線を整理する。そして浮いた予算で、本当に欲しかったソファを選んだり、将来のメンテナンス費用のために貯蓄したりする。
そんな「賢い選択」ができることこそが、注文住宅の本当の醍醐味です。
これから間取りを考える方は、ぜひ一度、図面の中の「無駄な通り道」を探してみてください。
その場所がリビングに変わったとき、あなたの理想の暮らしはぐっと現実に近づくはずです。