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S様お引渡し式を執り行いました!
2025.03.01
「新しいマイホームはどんな家がいいですか?」と質問すると、「収納がたくさんある家がいい」と答える方が大勢います。アパート暮らしでは収納が十分になく、家中に荷物が溢れて苦労されてきた方も確かに多いことでしょう。特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、日々増えていく荷物の収納に頭を悩ませているため、できるだけ大きな収納スペースを確保したいと考えるのは自然なことだと思います。
しかし、実際に新築された方々の声を聞くと、「収納を作りすぎて後悔している」という意外な感想も少なくありません。
そこで今回は、新築の収納計画において陥りやすい失敗と、理想的な収納づくりのポイントについて、具体的な事例を交えながら詳しくご説明していきます。
では、収納が多すぎると実際にどのような問題が生じるのでしょうか。5つの問題点を挙げてみました。
収納スペースを増やすことの最も大きなデメリットは、実際に暮らす空間が狭くなってしまうことです。例えば、8畳の子ども部屋に2畳のウォークインクローゼットを設置すると、実際の生活スペースは6畳以下になってしまいます。さらに、クローゼットの扉の開閉スペースなども考慮すると、実質的に使える空間はさらに狭くなります。
子育て世代のご家庭では、子どもの遊び場やお友達が遊びに来た時のスペース、将来的な学習スペースなど、実際の生活空間の確保が重要です。収納を優先するあまり、肝心の暮らしの空間が窮屈になってしまっては本末転倒と言えるでしょう。
収納スペースの増加は、建築コストの上昇にも直結します。クローゼットや押入れなどの収納を作る際には、壁や扉、棚板などの材料費に加え、施工費も必要になります。例えば、2畳のウォークインクローゼットを追加するだけでも、簡単に数十万円の追加費用が発生することも。また、収納スペースは住宅ローンの返済額にも影響します。たとえ数畳の増加でも、30年にわたって毎月の返済額に含まれることを考えると、決して軽視できない金額となります。
広い収納スペースがあると、つい「まだ場所があるから」と必要以上の物を保管してしまいがちです。特に子育て世代では、「下の子が大きくなったら使うかも」と着られなくなった服を取っておいたり、「もったいないから」と壊れたおもちゃを残したりしがち。その結果、いつの間にか収納スペースが溢れかえり、整理整頓が難しくなってしまいます。
実際、築2~3年で収納スペースが一杯になってしまったというご家庭も少なくありません。さらに困るのは、収納があふれた後の対処法。新たに家具を購入したり、レンタル収納を借りたりと、予定外の出費が発生することも多いのです。
収納スペースを重視するあまり、使い勝手を考えない配置になってしまうケースもあります。例えば、リビングで使う掃除用具を階段下収納にしまう、キッチンの調理器具を離れた場所のパントリーに保管する・・・といった配置では、日々の家事の負担が大きくなってしまいます。
特に、小さなお子様がいるご家庭では、家事の効率化が重要です。おもちゃの片付けや着替えの取り出し、洗濯物の収納など、頻繁に行う作業がスムーズにできる収納配置を考える必要があります。
収納が多すぎると、どこに何をしまったのか把握することが難しくなります。「確か2階のクローゼットのどこかにあると思うんだけど・・・」「押入れの奥にしまったはずなんだけど・・・」と探し回ることになり、かえって時間を無駄にしてしまいます。
また、季節の変わり目の衣替えや大掃除の際も、収納が多いと作業量が増えてしまいます。すべての収納を確認し、整理するとなると、休日まるまる1日以上かかることも珍しくありません。
では、上記で挙げたような問題点が生じないように、適切な量の収納スペースを設けるにはどうしたらいいのでしょうか。4つのポイントをご紹介します。
適正な収納量の目安を知る
一戸建ての場合、一般的に床面積の12~15%程度が収納スペースの目安と言われています。例えば、延床30坪(約100平米)の住宅であれば、3.6~4.5坪(約12~15平米)程度です。ただし、これはあくまでも平均的な目安です。
実際の収納計画では、家族構成やライフスタイル、お子様の年齢などに応じて適切な量を検討する必要があります。例えば、乳幼児期のお子様がいるご家庭では、ベビーカーや育児用品の収納など、一時的に多めの収納が必要になることもあります。
新築の収納計画では、まず現在の荷物の量を正確に把握することが重要です。部屋ごとに、以下のような項目で分類しながら確認していきましょう。
<リビングまわり>
・家族の趣味道具や本、雑誌類
・子どものおもちゃや絵本
・掃除用具や日用品のストック
・季節の装飾品やイベント用品
<寝室まわり>
・家族全員の衣類(季節ごとの量)
・寝具類やタオル
・アクセサリーや小物類
<子ども部屋>
・教科書や学用品
・習い事の道具
・思い出の品や制作物
・おもちゃや趣味の道具
こうした具体的な確認作業を行うことで、より現実的な収納計画を立てることができます。
将来的な変化を予測する
収納計画では、将来的な荷物の増減も考慮に入れる必要があります。特に以下のようなライフステージの変化は、収納ニーズに大きく影響します。
・お子様の成長に伴う変化(学習机、習い事の道具、服のサイズアップなど)
・家族の趣味や仕事の変化(在宅ワークの可能性など)
・親世代の生活変化(老後の趣味道具など)
ただし、将来の変化を見込んで必要以上の収納を作ることは避けましょう。代わりに、可動棚や収納ボックスなど、フレキシブルな収納システムを取り入れることで対応できます。
使用頻度による配置の最適化
収納計画では、物の使用頻度に応じた適切な配置を考えることが重要です。使用頻度は大きく3段階に分けて考えるとよいでしょう。
STEP1:毎日使うもの
手の届きやすい場所に配置。例えば、キッチン用品は作業場所のすぐ近くに、子どもの着替えは洗面所周辺に、といった具合です。
STEP2:週1~2回使うもの
少し手の届きにくい場所でも可。季節の装飾品や掃除用具、趣味の道具などがこれにあたります。
STEP3:年に数回使うもの
比較的アクセスの悪い場所でも問題ありません。スーツケースや記念品、思い出の品などです。
次に、効率的な収納を実現するためのポイントをご紹介します。
<デッドスペースの有効活用>
階段下や小屋裏、床下などのデッドスペースは、収納スペースとして活用することで、生活空間を圧迫せずに収納を確保することができます。
例えば、
・階段下:掃除用具や季節家電の収納
・小屋裏:思い出の品やクリスマスツリーなどの季節物
・床下収納:防災用品や重たい物の保管
・・・といった具合に、使う頻度や場所を考えて確保しましょう。
<収納の使いやすさを高める工夫>
収納スペースを効率的に使うためには、以下のような工夫も効果的です。
・可動棚の採用:子どもの成長に合わせて高さを調整できる
・引き出し式収納:奥の物も取り出しやすい
・仕切り板の活用:小物類を整理しやすい
・収納ボックスの使用:カテゴリーごとに整理できる
新築の収納計画で最も避けたいのは、「とにかく収納を多く」という考え方です。収納は、家族みんなが快適に暮らすための重要な要素ですが、必要以上のスペースはかえって生活の質を下げてしまう可能性があります。
理想的な収納とは、必要なものが必要な場所にあり、取り出しやすく、しまいやすい。そして何より、家族みんなが心地よく暮らせる生活スペースとのバランスが取れていることが大切です。多すぎたり、少なすぎたりして、暮らし始めてから後悔しないように、しっかりと計画しましょう。